データ分析記事 / 東京1区は5回中4回が僅差——「万年接戦区」を実データでランキング

海江田万里
東京1区・2009/2017年当選

山田美樹
東京1区・2012/2014/2021年当選
東京1区は5回中4回が僅差——「万年接戦区」を実データでランキング
5回の衆院選のうち、当落差5ポイント未満の「僅差」が何度起きたかで選挙区をランキング。首位・東京都第1区は5回中4回が僅差、平均マージンはわずか3.26ポイント——「激戦区」報道で名前が挙がる選挙区が、実際に毎回接戦かどうかをデータで確かめる。
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「今回の選挙区は接戦」という報道は選挙のたびに聞くが、実際に同じ選挙区で何度も僅差の勝負が繰り返されているのはどこなのか。2009〜2021年の5回の衆院選(現行289区マップと矛盾なく比較できる範囲)で、当選者と次点の得票差が有効投票の5ポイント未満だった「接戦」を選挙区ごとに数えた。
東京1区が最多——5回中4回が僅差
東京都第1区
1位
4/5回が僅差
3.26pt
平均マージン
<5pt
接戦の定義
当選者と次点の得票差
もっとも多く僅差が繰り返されたのは東京都第1区で、比較可能な5回のうち4回が5ポイント未満の接戦、平均マージンは3.26ポイントしかない。次いで石川県第3区(4/5回)、静岡県第6区(4/5回)と続く。 なお山梨県第1区は区割りの関係で比較できるのが3回分のみだが、その3回すべてが僅差(平均マージン1.27pt)——データの少なさを差し引いても際立って接戦の多い選挙区だ。
データを表で見る
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 東京都第1区 | 4回 | 平均マージン 3.26pt(5回中) |
| 石川県第3区 | 4回 | 平均マージン 5.13pt(5回中) |
| 静岡県第6区 | 4回 | 平均マージン 9.37pt(5回中) |
| 山梨県第1区 | 3回 | 平均マージン 1.27pt(3回中) |
| 東京都第3区 | 3回 | 平均マージン 4.83pt(5回中) |
| 神奈川県第12区 | 3回 | 平均マージン 6.17pt(5回中) |
| 沖縄県第1区 | 3回 | 平均マージン 6.54pt(5回中) |
| 北海道第1区 | 3回 | 平均マージン 6.97pt(5回中) |
| 大阪府第4区 | 3回 | 平均マージン 7.8pt(5回中) |
| 千葉県第1区 | 3回 | 平均マージン 7.81pt(5回中) |
| 福島県第4区 | 3回 | 平均マージン 8.14pt(5回中) |
| 東京都第18区 | 3回 | 平均マージン 8.21pt(5回中) |
首位の東京1区の中身は、そのまま12年間の政党の攻防史になっている。2009年は海江田万里氏(民主党)がよさのかおる氏を3.92ポイント差で下し、2012年は山田みき氏(自由民主党)がわずか1,134票差(0.41ポイント)で奪還。2017年には海江田万里氏が1.28ポイント差で取り返し、2021年に再び山田みき氏が3.58ポイント差で勝つ——5回で当選者が3回入れ替わり、同じ2人(山田みき氏と海江田万里氏)が互いの勝ち幅を数ポイント以内に抑え続けた、文字通りの「万年接戦区」だ。
3位の静岡6区も似た構図で、わたなべ周氏とかつまた孝明氏の対決が2012年(4.76pt差)・2014年(4.87pt差)・2017年(0.27pt差)と3回連続で5ポイント未満に収まり、2021年についにかつまた孝明氏(自由民主党)が1.96ポイント差で初めて勝った。「接戦を繰り返した末に議席が動く」という小選挙区の力学の見本のような推移だ。
最小差は50票——写真判定級の勝負一覧
「繰り返し接戦になる区」とは別に、単発の勝負として最も際どかったレースも実データから拾える。5回の衆院選のレースの中で最小の当落差は新潟県第3区(2017年)の50票——黒岩たかひろ氏(無所属、95,644票)がさいとう洋明氏(自由民主党、95,594票)をかわした一戦だ。
| 選挙区・年 | 当選 | 次点 | 票差 |
|---|---|---|---|
| 新潟県第3区・2017年 | 黒岩たかひろ(無所属)95,644票 | さいとう洋明(自由民主党)95,594票 | 50票 |
| 新潟県第2区・2014年 | 細田健一(自由民主党)70,589票 | わしお英一郎(民主党)70,487票 | 102票 |
| 佐賀県第1区・2021年 | 原口一博(立憲民主党)92,452票 | 岩田かずちか(自由民主党)92,319票 | 133票 |
| 新潟県第6区・2021年 | うめたに守(立憲民主党)90,679票 | たかとり修一(自由民主党)90,549票 | 130票 |
| 埼玉県第6区・2012年 | 中根かずゆき(自由民主党)90,871票 | 大島あつし(民主党)90,673票 | 198票 |
| 京都府第3区・2012年 | 宮崎けんすけ(自由民主党)58,951票 | 泉ケンタ(民主党)58,735票 | 216票 |
| 新潟県第4区・2021年 | 菊田まきこ(立憲民主党)97,494票 | 国定勇人(自由民主党)97,256票 | 238票 |
| 北海道第7区・2014年 | 伊東よしたか(自由民主党)72,281票 | 鈴木たかこ(民主党)72,056票 | 225票 |
| 栃木県第2区・2014年 | 福田あきお(民主党)62,439票 | 西川こうや(自由民主党)62,240票 | 199票 |
| 和歌山県第1区・2012年 | 岸本周平(民主党)60,577票 | かど博文(自由民主党)60,277票 | 300票 |
10位まで並べても票差はすべて3桁。新潟県は上位10件中4件(3区・2区・6区・4区)を占め、県単位で見ると全国で最も「写真判定」が多発した激戦地だったことが分かる。なお「鉄板区」の記事で5回連続当選の典型例として挙げた北海道7区の伊東良孝氏も、2014年には225票差でこのリストに入っている——「鉄板」と「接戦」は排他的な概念ではない。

写真: 内閣府ホームページ (CC BY 4.0)
同じ2人が5回対決した「因縁の選挙区」
当選者と次点の組み合わせを数えると、同じ2人の候補が1位・2位を3回以上分け合った選挙区が116区ある(候補者名の表記が完全一致する場合のみ数えた保守的なカウント)。5回すべてで同じ顔合わせになった選挙区も複数ある。例えば鳥取県第2区では湯原俊二氏と赤沢りょうせい氏が5回連続で対決し、5回とも赤沢氏が勝った——ただし票差は2012年の28.99ポイントから2009年の0.37ポイントまで大きく振れており、同じ顔合わせでも「風」次第で勝負の際どさは桁違いに変わっている。
一方、福岡県第9区のおがた林太郎氏とみはら朝彦氏も5回連続の対決だが、こちらは2009年におがた林太郎氏、2012〜2017年はみはら朝彦氏、2021年に再びおがた林太郎氏と、勝者が2回入れ替わった。同一カードの再戦が政権交代の波をそのまま映す「定点観測点」になっている。
「万年接戦区」は大都市圏に集中
上位に並ぶのは東京・神奈川・大阪など大都市圏の選挙区が中心で、前の「鉄板区」の記事で見たものとは対照的な分布を見せる。大都市圏の選挙区は自民 vs 非自民の二大勢力が拮抗しやすく、全国的な「風」がわずかに吹くだけで当落が入れ替わる——鉄板区が「地盤」で決まるのに対し、万年接戦区は「その時々の政党への風」で決まる選挙区だと言える。ただし石川3区・山梨1区のような非大都市圏の接戦区も上位に入っており、「地方=鉄板」という単純な図式でもないことは、上のランキングが示すとおりだ。
このランキングの接戦区のうち3区は「注目選挙区」としても特集されています
当選者の出典付き発言・実写真つきの詳細プロフィールを読めます(district名で対応づけ。2022年の区割り改定で選挙区番号自体は前後の地図で異なる場合があるため、番号ではなく選挙区名で照合しています)。
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