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もし選

選挙区マップ / 計算方法

Methodology

計算方法・透明性について

既存の選挙データベースサイトの多くは、結果を見せるだけで「どう計算したか」を説明しません。このページは、 マップ・シナリオパネルの15種類のツールが実際に何をしているかを、数式の羅列ではなく手順として説明します。 目的は2つです。ひとつは、シミュレーション結果を鵜呑みにせず「この数字の出どころ」を自分で検証できるようにすること。 もうひとつは、実データそのまま(グループA)と、外部の仮定を含む推計(グループB)を明確に区別することです (区別の理由は本ページ末尾で説明します)。

比例代表の議席配分:ドント式(D'Hondt method)

日本の衆院選比例代表ブロックは、実際にドント式で議席を配分しています。このサイトの比例議席計算(lib/dhondt.ts)も同じ方式です。仕組みは単純です。

  1. 各政党の得票数を、1, 2, 3, 4…という整数で順番に割っていく(「除数」)。
  2. 出てきた商(得票数 ÷ 除数)を、政党の区別なく全部まとめて大きい順に並べる。
  3. 商が大きい順に、定数の数だけ上から議席を割り当てていく。
  4. 議席数に達したら終了。各政党が獲得した商の個数が、その政党の議席数になる。

結果として、単純な得票率での比例配分より、少しだけ大政党に有利に働く性質があります(除数が1のときの商=素の得票数が最初に選ばれやすいため)。これはこの実装のクセではなく、ドント式そのものの数学的性質です。

具体例:A党100,000票・B党80,000票・C党30,000票・D党20,000票、議席8(このサイトのdhondt.test.tsと同じ数字)
除数A(100,000)B(80,000)C(30,000)D(20,000)
÷1100,00080,00030,00020,000
÷250,00040,00015,00010,000
÷333,33326,66710,0006,667
÷425,00020,0007,5005,000

太字(水色)が「上位8個の商」に入った枠です。8個の内訳はA党4個・B党3個・C党1個・D党0個 — したがってA=4議席、B=3議席、C=1議席、D=0議席になります。D党は最大の商(20,000)が他党の4番目までの商より小さいため、1議席も得られません。

このサイトの比例パートは、実際の11ブロックそれぞれについてこの手順を独立に実行し、合計しています (ブロックをまたいで得票を合算してから配分し直す、ということはしていません — 実際の制度と同じです)。

例外が一つあります。2024年(第50回)データセットでシナリオを何も操作していない「素の」表示は、 このドント式の再計算ではなく、実際に確定した2024年の各ブロック・各政党の獲得議席数をそのまま使っています。 理由は、実際の2024年選挙では国民民主党が一部のブロックで比例名簿の登載者数を使い切ってしまい、 本来ドント式で得られるはずだった議席が法律上ほかの政党に回った実例があるため — 得票数と定数だけを使うドント式では、この名簿切れによる議席移動までは再現できません。 シナリオスライダーを一つでも動かすと、その時点でこのドント式の再計算に切り替わります (2026年データセットは、この「実際の確定議席」が個別ブロック単位では未整備のため、素の表示でも常にドント式です)。

①・⑫ 政権交代に必要なスイング逆算/直接入力スライダー(Uniform National Swing)

選挙分析で古くから使われる「一様全国スイング(UNS)」という手法をそのまま使っています。考え方はこうです。

  1. 289の小選挙区それぞれについて、「与党(自民+公明)候補の得票」と「その選挙区で一番強い野党候補の得票」の差を、全体の得票に対する割合(pt)で計算する (computeRulingMargin。マップの選挙区クリック時の「マージン」表示と同じ関数を使っています)。
  2. 与党が勝っている選挙区だけを、このマージンが小さい順(=一番危ない選挙区から)に並べる。
  3. 「全国どこでも一律に、与党から野党へ X pt分の票が動いた」と仮定すると、マージンが 2X pt未満の選挙区は逆転する、という古典的なスイング公式(必要スイング=マージン÷2)を使い、 与党が過半数(233議席)を割るのに必要な最小のXを、マージンの小さい方から積み上げて求める。

重要な限界: これは「全国どこでも同じだけ票が動く」という単純化です。実際の選挙では地域差・候補者個人の要因で動き方は一律ではありません。UNSはあくまで「おおまかな距離感」を測る古典的ツールであり、個別選挙区の実際の結果を予言するものではありません。 ①自体は読み取り専用(読むだけで動かせません)で、他のシナリオスライダーとは独立です — 「純粋に今の実データで、あと何ptで政権交代ラインか」を見るための読み解きツールだからです。

⑫: ①を実際に動かせる直接入力版

⑫は、①と同じ「与党⇄野党」1軸のUNSを、指定したpt数だけ実際に289選挙区すべての得票に適用し、議席シミュレーション結果に反映する直接操作版です(applyUniformSwing。選挙区プロフィールページの単体選挙区シミュレーターに元々あった全国一律スイングと同じ計算式・同じ範囲です)。①が「今のままだと分析上あと何ptか」を読み解く専用ツールなのに対し、⑫は「実際にXpt動いたら議席はどうなるか」を体感する側で、両者は同じ計算の裏表です。

⑪ 2021→2026年 実績トレンド反映スライダー

①のUNSは「与党⇄野党」という1本の軸だけで票の動きを近似します。⑪はこれを、実際に起きた多党間の変化に一般化したものです。2021年(第49回・このマップの基準年)から2026年(第51回・解散総選挙)までの間に、全国の政党別得票率が実際にどれだけ動いたかを計算し、その変化の何%を反映するかをスライダーで指定します。

  1. 2021年の全289小選挙区の実候補者得票と、2026年(shugiin2026データセット)の全小選挙区の実候補者得票を、それぞれ全国集計して政党別の得票シェアを出す(computeNationalVoteShareTrend)。
  2. 政党ごとに「2026年シェア − 2021年シェア」を計算し、これを実際に観測された「変化ベクトル」とする。
  3. スライダーの割合(0〜100%)だけこのベクトルを掛け合わせ、2021年の各選挙区の候補者得票に一律加減算する(applyNationalTrendSwing)。
実際の全国得票シェアの変化(2021年 → 2026年、全289小選挙区の実データ集計)
政党2021年2026年変化
自民47.78%49.09%+1.31pt
立憲29.89%0.00%−29.89pt
国民民主2.03%7.52%+5.48pt
参政0.00%6.95%+6.95pt
無所属等5.08%25.05%+19.97pt

スライダーを50%にすると、上表の変化幅の半分(例: 自民+0.66pt、立憲−14.95pt)を2021年の各選挙区の得票に加減算した状態を試算します。

正直な限界:

立憲の得票シェアが2026年にほぼ0%、「無所属等」が大きく伸びている点は要注意です。これは実際にそれだけ議席を失ったという意味だけでなく、一部はnormalizePartyName()が2026年に現れた未収録の新党名を「無所属等」バケットに分類してしまう、このプロジェクトの政党名寄せロジックの限界も混ざった数字です(分析記事6・7で見つかった同じ現象)。つまり①同様、区割りは2021年時点のまま(新区割りへの組み替えではなく、得票の実績トレンドのみを反映するツールです)で、ここで示す変化幅自体は実データですが、政党の内訳の一部は名寄せの粗さを割り引いて読む必要があります。

②・⑭ 一票の格差是正シミュレーション/比例ブロック人口比例配分(人口比例の再配分)

いわゆる「一票の格差」の是正案の一つ、人口比例配分をシミュレートします。実際の総務省統計の議席配分規則 (アダムズ方式など)を再現するものではなく、最大剰余法という比較的わかりやすい比例配分方式で 「都道府県間の289議席を人口通りに配り直したら」を計算しています。

  1. 2020年国勢調査の全国人口を289議席で割り、「1議席あたりの人口(基準数)」を出す。
  2. 各都道府県の人口を基準数で割り、小数のまま出た値の整数部分をいったん配分する。
  3. 289議席のうち整数部分の合計で埋まらなかった残り議席を、小数部分(余り)が大きい都道府県から順に1議席ずつ追加する(これが「最大剰余法」)。
具体例:人口560万人・310万人・130万人の3県、合計10議席
人口基準数で割った値整数部分余り議席最終議席
X県5,600,0005.65+16
Y県3,100,0003.133
Z県1,300,0001.311

整数部分の合計は5+3+1=9。残り1議席は、余り(0.6, 0.1, 0.3)が一番大きいX県に追加され、 最終的にX=6・Y=3・Z=1(合計10)になります。

ここからが「概算」になる部分:

この配分し直しは、都道府県ごとの議席の増減(例: 東京都+7、秋田県−1)までは実データで正確に計算できます。 しかし新しい議席は「新しい区割り」がなければ、どの政党が獲得するかを決められません — 実際に289の選挙区の境界を引き直す作業は、このサイトの範囲外です(そもそも法改正が必要な作業です)。 そこでこのツールは、「増減した議席は、その都道府県の現在の小選挙区の政党構成比と同じ配分になる」という単純化した仮定を置いて、政党別の議席増減を概算しています。これは実際の区割り変更のシミュレーションではなく、 「もし人口通りに配分し直したら党派バランスはどちらに動くか」という方向性を見るための近似です。

⑭: 同じ考え方を比例代表11ブロックにも適用

②は小選挙区(都道府県間)の話でしたが、⑭は比例代表側、11ブロック間の同じ問題を扱います。各ブロックの実際の構成都道府県(法律で固定、10増10減の影響を受けません)の2020年国勢調査人口を合算し、②と同じ最大剰余法でブロックごとの人口比例議席数を計算します(computePrBlockPopulationTargets)。スライダーは、実際の法定ブロック定数からこの人口比例目標へ0〜100%の割合で寄せ、寄せた後のブロック定数で通常通りドント式を実行し直します。②と違い、こちらは「どの政党が新しい議席を獲得するか」を推測する必要がありません — ブロック定数が変われば、そのブロックの実際の得票でドント式を再実行するだけで、政党別の議席配分が正確に決まるためです(②のような「現在の構成比で按分」という追加の単純化は不要です)。

⑩ 実際の「10増10減」前後比較(②との違い)

2022年の公職選挙法改正(いわゆる「10増10減」)で、2020年国勢調査人口にもとづき都道府県ごとの小選挙区数が実際に見直され、2024年(第50回衆院選)から施行されました。②が「あるべき配分」をこのサイト独自に再計算した推計なのに対し、⑩は推計ではありません — 実際に施行された新区割り(2024年・2026年の候補者データ)の都道府県別選挙区数を、実データからそのまま集計しています。

  1. shugiin2024またはshugiin2026データセット(どちらも同じ新区割り)の候補者データから、都道府県ごとの実際の選挙区数を数える(computeRedistrictingTable)。
  2. 2021年時点(このマップの基準)の都道府県別選挙区数と比較し、実際の増減(delta)を出す。
  3. ②と同じ関数(estimateMalapportionmentSeatShift)で、この実際の増減を政党別の議席増減に変換する。
実例(gtfs-gis.jp境界データと突合済み・推計ではなく実際の選挙区数)
都道府県2021年時点2024年〜(新区割り)増減
東京都2530+5
広島県76−1

このカードの「新区割り後に切替」ボタンは、②と同じ議席増減→政党推計のロジックを、この実際の増減表に適用した結果を議席サマリーに反映します。

ここでも「概算」になる部分:

都道府県ごとの選挙区数そのものは実データですが、増減分をどの政党が獲得するかは②と同じ単純化(その都道府県の現在の政党構成比に比例して配分したと仮定)に頼っています。2021年時点の区割りと2022年以降の新区割りを選挙区単位で直接対応づける表(クロスウォーク)は今回作成していないため、「どの具体的な選挙区が増減したか」までは踏み込めていません。

③・⑦・⑨・⑬ 投票率スライダー:投票率弾力性モデル・トレンド外挿・若者投票率

「投票率が動いたら結果はどう動くか」を表すため、各選挙区について実データから「投票率弾力性」という係数を計算しています。定義は次の通りです。

弾力性 = (2021年の野党側得票率 − 2017年の野党側得票率) ÷ (2021年の推定投票率 − 2017年の推定投票率)

つまり「投票率が1pt動くと、与党vs野党(自民+公明 vs それ以外)の得票率がどれだけ動いたか」を、 2017→2021の実際の2点間の変化として実データから逆算したものです。スライダーを動かすと、この係数 ×動かしたpt数ぶん、各選挙区の与党・野党の得票を再配分します(各陣営内の候補者間は今の得票比率を保ったまま拡大縮小)。

2017年と現在の選挙区の境界が一致しない選挙区(区割り変更があった県など)は、この計算ができません。 その場合は、全国平均の弾力性(③向け)か、都市部/非都市部それぞれの平均弾力性(⑦向け、国勢調査の人口密度で判定)で代用します。

正直な限界:

この弾力性は「2017年→2021年」というたった2つの選挙の間の変化から計算した値です。何十年分もの回帰分析ではありません。統計的な検出力は低く、選挙区ごとのブレも大きいはずです。 それでも外部の想定を一切持ち込まず実データのみから計算しているため、グループA(実データ由来)に分類しています — 「精度が高い」という意味ではなく、「出どころが全部実データ」という意味です。

⑬: 2点だけでなく、選挙区が持つ全履歴を使う(回帰分析に修正)

③・⑦の弱点は「2017→2021のたった2点」である点でした。実は選挙区の多く(289中258)は、2009・2012・2014・2017・2021年の最大5回分の実際の投票率履歴を持っています。⑬はこの履歴に最小二乗法で回帰直線を当てはめ、その傾き(computeDistrictTurnoutTrends)を「1回の選挙あたり投票率がどれだけ動く傾向にあるか」として計算し、その傾向がスライダーで指定した回数分そのまま続いた(マイナスなら巻き戻した)と仮定して、③・⑦と同じ投票率弾力性モデルに投入します。区割り変更などで使えない選挙区は、③・⑦と同じく全国・都市部/地方いずれかの平均で代用します。これも③・⑦と同じ計算の再利用(applyTurnoutShift)であり、新しい投票行動モデルを導入するものではありません — 「投票率がどれだけ動くか」の入力を、手動指定から実際の複数選挙分の履歴に置き換えただけです。

修正履歴(正直に書きます):

このスライダーの最初の実装は、回帰直線ではなく「隣り合う選挙同士の投票率の差を平均する」方法を使っていました。一見「複数選挙分の履歴」を使っているように見えますが、数式的にはこの平均は必ず(最後の実データ点 − 最初の実データ点) ÷ (データ点数 − 1)に一致してしまいます(差を順に足すと途中の項がすべて打ち消し合うため)。つまり4〜5点の実履歴を持つ選挙区でも、実際に計算へ効いていたのは最初と最後の2点だけで、途中の年の動き(例えば一時的な急落・急伸)はどうであっても最終的な数字に一切反映されていませんでした。最小二乗法の回帰直線に置き換えたことで、途中の実データ点も含めた履歴全体の形が傾きの推定に反映されるようになっています(2〜3点しかない選挙区では、この2つの方法はたまたま同じ値になるため、そうした選挙区の挙動は変わっていません)。

⑨: 若者投票率上昇スライダー(実データへ全面的に置き換え)

このスライダーはもともと⑧と同じ「仮定を含む推計」(グループB)でしたが、総務省の実データだけで組み直せたため、今はグループA(実データ由来)です。仕組みは次の通りです。

  1. 総務省選挙部が選挙のたびに公表している抽出調査「衆議院議員総選挙における年代別投票率(抽出)の推移」(S.42〜R.8、全21回分)から、10代・20代の実際の投票率を現在の基準値として使う(2026年・第51回: 10代43.45%・20代39.01%、全体56.26%)。
  2. 同じ総務省の詳細調査「第48回衆議院議員総選挙における年齢別投票状況(抽出調査)」(188投票区、5歳刻みの年齢階層別有権者数まで公表)から、有権者に占める10代・20代の実際の割合を計算する(サンプル476,261人中63,704人 = 13.38%)。
  3. スライダーで指定した「若者投票率+Xpt」に、この実際の割合(13.38%)を掛けて「全国投票率が何pt動いた ことに相当するか」に換算し、③・⑦・⑬とまったく同じ投票率弾力性モデル(applyTurnoutShift)に投入する。

重要な点: 「若者がどの政党を支持しやすいか」という仮定は、この新しい実装には一切登場しません。投票率が上がった分の得票がどちらに動くかは、③・⑦・⑬と全く同じ「実際に投票率が動くと与党⇄野党の得票がどう動いてきたか」という2017→2021の実績弾力性がそのまま決めます。この選挙区の年齢別有権者数までは公表されていないため(国勢調査の年齢データも0-14/15-64/65歳以上の3区分までしかありません)、若者の有権者割合は全国一律の数値を使っています——選挙区ごとに変えられるだけの細かい実データはまだ存在しません。

⑮ 投票日の荒天シミュレーション(「雨」で依頼を受け、「風」で実装した理由)

サイト運営者からの依頼は「雨の有無のシミュレーション」でしたが、実装前に日本語の学術文献を調べた結果、その通りには作れないことが分かりました。この経緯自体を、他のツールと同じ透明性の基準で説明します。

調べて分かったこと:

従来の日本の政治学研究(蒲島郁夫 1988: 衆院選で降雨ダミーに−2.29ptの有意な効果/浅野正彦 1993: −2.5ppt)は、いずれも「雨が降ると投票率が下がる」という結果でした。しかし査読済みの再検証論文、中井遼・石田陸人「天候が投票率に与える影響の再検討 —日本の多様な天候データに着目して—」(『選挙研究』38巻1号, 2022年)が、1963年以降の衆院選・都道府県単位のパネルデータ(890観測)に、降雨量だけでなく風速・気温・湿度・日照時間・降雪量まで含めて重回帰分析をやり直したところ、次のことが分かりました。

  • 降雨量そのものには、統計的に頑健な効果がない。生の降雨量(mm)だけを見ると弱い負の効果が出るが、これは2017年10月の大型台風で250mm以上の雨が降った三重・和歌山・徳島の3件の外れ値に引っ張られたもので、対数変換すると有意性が消える。
  • 実際に頑健な効果を持つのは平均風速: 風速が1m/s強まるごとに投票率が約0.27〜0.29pt低下し、無風日と強風日(気象庁の「強風」基準、10m/s以上)の差はおよそ3ptに達する。気温・湿度・日照時間・降雪量には有意な効果がない。
  • 雨自体に効果が出るのは風速が概ね4m/s以上の時に限られる(交互作用)——1979年の台風接近時のデータで見つかっていた「雨の効果」は、台風に伴う風との交絡だった可能性が高いというのがこの論文の結論です。

この実装がしたこと・しなかったこと:

以上を踏まえ、このスライダーは「雨」ではなく実際に頑健な効果が確認された平均風速(0〜12.3m/s、論文が実際に観測した範囲)を動かす形にしました。換算した投票率の低下分は、③・⑦・⑨・⑬と同じ実データの投票率弾力性モデルにそのまま投入します。依頼にあった「効果は年代・都市部/地方で異なる」という点については、根拠となる論文が都道府県単位の集計分析であり年代別・都市部/地方別の分解を行っていないため(「どの政党に有利/不利かは本分析からは分からない」と論文自身が明記)、差を仮定せず全選挙区に一律で適用しています——存在しない年代別・地域別の効果を作り出すよりは、何も仮定しない方を選びました。

グループA・Bどちらに分類したか:

係数自体は査読済み学術論文からの引用であり、開発者の当てずっぽうではありません。ただし①〜⑦・⑨〜⑭のように「このサイト自身がすでに取り込んだ実データだけで完結する」計算ではなく、外部の研究が推定した回帰係数を借用しているため、グループB(仮定を含む推計)に分類しています。⑧(方向性のみの手作り係数)よりは根拠が具体的で出典を確認できるという違いはありますが、「このサイトの外」の推定値を使っている点は同じという判断です。

このサイト自身の実データ分析との整合性:

このサイトには別途、「雨の日は投票率が下がるのか:気象データで検証する」という分析記事があり、気象庁の実際の観測データ(全国9都市×衆院選7回、63件)と実際の推定投票率を突き合わせています。そちらの結論は「弱いながらもマイナスの相関が実際に見られた(統計的には弱い部類)」というもので、2017年の台風直撃時の投票率が突出して低いわけではなかったことなども含め、「雨単体の影響は弱く一貫しない」という今回の学術論文の結論と方向性は矛盾しません——独立した2つの実データ分析(このサイト自身の相関分析と、査読済み論文の重回帰分析)が、同じ「雨だけでは説明が弱い」という着地点に至っている、という点は付記しておく価値があると判断しました。

④ 小選挙区・比例の議席比率スライダー

衆院の総議席465(小選挙区289+比例176)はそのまま固定し、「もし小選挙区と比例の配分数が違ったら」を試算します。

  1. 今の実データ(またはシナリオ適用後)で、各政党が獲得している小選挙区議席の「シェア」を計算する。
  2. スライダーで指定した新しい小選挙区総数に、そのシェアをそのまま掛けて再配分する (端数は最大剰余法で1議席単位に丸める)。
  3. 比例側は 465 − 新しい小選挙区数 が総枠になり、11ブロックの配分は現在の人口比率を保ったまま比例的に再スケールしたうえで、各ブロックで通常通りドント式を実行する。

これは何をシミュレートしていないか:

実際に小選挙区の数を変えるには、289の選挙区の境界を統合・分割する作業が必要です。どの選挙区がどう統合されるかによって、 個別の勝敗は現実には大きく変わり得ます。このツールはそこまで踏み込まず、「今の政党別の強さの比率をそのまま維持したら、 比率だけ変えた場合の議席規模感はどうなるか」という粗い試算にとどまります。

⑤・⑥ 政党合併・野党一本化:得票の移し替え

この2つは、どちらも「ある候補の実際の得票を、別の候補に足し合わせたら当落はどうなるか」という同じ考え方の応用です。

⑤ 政党合併・分裂シナリオ

選択した1つの選挙区で、指定した2政党の候補の実際の得票をそのまま合算し、合計得票で再度1位を決め直します。 他の候補の得票は変わりません。得票を合算した後、投票総数に対する割合(得票率)も全候補分を計算し直します。

⑥ 野党一本化度合いスライダー(0〜100%)

各選挙区で、まず「与党(自民+公明)以外」の候補の中から最多得票の候補(最有力野党候補)を特定します。 スライダーの割合ぶん、それ以外の野党候補それぞれの得票を最有力候補に移し替えます。0%なら何も動かず、 100%なら最有力候補以外の野党票が丸ごと最有力候補に移ります。与党候補の得票は一切変更しません。

どちらも、実際にあった得票をそのまま足し引きしているだけなので、「新しい支持が生まれる」という想定は一切ありません。 逆に言えば、実際の一本化・合併では有権者の一部が離反する(合算した票の合計に届かない)ことも起こり得ますが、 このツールはそれを考慮しない「満額移し替え」の上限ケースを示すものです。

⑥のロジックを2009〜2026年の7回すべての衆院選に適用した分析は「野党一本化シミュレーション:もし過去7回、完全に一本化していたら」、2026年単体に絞った詳しい分解は「新党『中道改革連合』はなぜ得票18%で議席7しか取れなかったのか」の記事で読めます。

⑧「仮定を含む推計」グループについて — なぜラベルが違うのか

シナリオパネルの①〜⑦・⑨〜⑭は「グループA:実データ由来」、⑧と⑮は「グループB:推計・仮定を含む」と、はっきり別のバッジで表示しています(⑮の分類理由は⑮自身のセクション末尾を参照)。これは見た目の分類ではなく、計算の性質が根本的に違うからです。

グループAの各ツールは、すべて「実際に観測されたデータの中で完結する」計算です — D'Hondt配分、実際の得票の合算、実際の2017→2021の変化から求めた係数、実際の人口、実際の複数選挙分の投票率履歴、実際の年代別投票率と有権者構成——外部からの想定を一切持ち込みません(前提が単純化である場合はそう明記していますが、単純化と「外部の仮定の輸入」は別の話です)。 ⑨若者投票率上昇スライダーは元々ここではなくグループBでしたが、総務省の実データ(年代別投票率の推移・詳細な年齢別有権者数調査)だけで組み直せたため、現在はグループAに移動しています——詳しくは③・⑦・⑨・⑬のセクションを参照してください。

⑧世代交代シミュレーションだけは、ILLUSTRATIVE_YOUNGER_VOTER_SKEWという係数を今も使っています。これは「NHKなどの出口調査で一般に報じられる年代別の支持傾向」を参考に、 「自民・公明はやや弱め、維新・国民民主はやや強め」という方向性だけを反映した、開発者が手で決め打ちした値です。特定の一次データセット(例えば実際のNHK出口調査の生データ)から算出したものではありません。

⑧は、「何年後か」というスライダー値を国立社会保障・人口問題研究所(IPSS)の将来推計人口(令和5年推計・中位仮定、実データ)に照らして 「その年数で高齢化が実際にどれだけ進むか」を求め、さらにその選挙区の実際の年少人口(15歳未満)割合で重みづけしたうえで、上記の係数に掛けています (年少人口が多い選挙区ほど、将来の世代交代の影響が大きいだろうという単純化)。 つまり⑧で実データなのは「高齢化がどれだけ進むか」という時間軸の部分と、実際に総務省の抽出調査で確認できる「世代間の投票率差(例: 2026年、70代以上59.33%・60代70.24%に対し20代39.01%・10代43.45%)」という背景説明の部分だけで、 「その世代交代がどの政党の追い風になるか」は上記の手作りの係数のままです——⑧が依然としてグループBなのはこのためです。⑨と違い、選挙区ごとの年代別有権者データが存在しないため、⑨と同じ「実データだけで組み直す」道筋はまだ塞がれています。

結論として:

⑧は「大まかにこの方向に動くとしたら」を体感するための、方向性のみのイラストレーションです。 具体的な pt 数値を予測値として引用しないでください。⑧と⑮だけ他と違うバッジ・違う枠線色(琥珀色)を 常時つけているのは、この違いをUIの上でも一貫して隠さないためです。

⑧のロジックを実際に10年後・20年後に適用した長文の分析は「世代交代シミュレーションで見る『10年後・20年後の勢力図』」、その前提の強さを0.5〜2倍に振ったときの結果の揺れ幅は「世代交代シミュレーションの感度分析」の記事で扱っています。

このページで説明している計算の元になっている実データそのものは、CSVファイルとしてダウンロードできます。 対象データの一覧・列の説明・出典は データセットページ → にまとめています。

各データがどこまで実データでどこから推計かの概要は トップページにも記載しています。 実際に動かして確認したい場合は 選挙区マップ・議席シミュレーター →