データ分析記事 / 地方+6.9ポイントから都市部が上回るへ——投票率の「地方優位」は逆転した
地方+6.9ポイントから都市部が上回るへ——投票率の「地方優位」は逆転した
国勢調査の人口密度で「都市」「地方」に分けた289小選挙区の推定投票率を2009〜2021年で比較。2009年は地方が6.9ポイント高かったが、2021年には都市部がわずかに上回る——「地方は投票率が高い」という通説が実データの上でどう崩れたかを追う。
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「地方は投票率が高く、都市部は低い」。選挙報道で当たり前のように繰り返されてきたこの通説、実データで確かめるともう成り立っていない。2009年に6.9ポイントあった地方の優位は、2021年にはゼロを通り越してわずかに逆転している。
確かめ方はシンプルだ。国勢調査の人口密度で289小選挙区を「都市」「地方」の2群に分け(全国市区町村の人口密度中央値が基準、289区全体では都市145区・地方144区でほぼ半々)、各選挙区の推定投票率を2009〜2021年の5回の衆院選で群ごとに平均した。各年の平均に入るのは区割りが現行マップと矛盾なく接続できる選挙区のみで、その数は年により異なる(2009年は都市136区・地方116区、2017年以降は都市145区・地方144区)。
地方6.9ポイント優位から、差はほぼ解消・逆転へ
地方+6.9pt
2009年の差
地方が高い
都市+2.4pt
2021年の差
都市がわずかに高い
289区
対象選挙区
都市/地方は人口密度で分類
2009年(政権交代選挙)は地方の推定投票率(72.9%)が都市部(66.0%)より6.9ポイントも高かった。ところがその差は2012年にはほぼ消え(0.68pt)、2017年にいったん地方優位(+2.5pt)に戻ったあと、2021年には都市部の方がわずかに高い(2.4pt)という、通説とは逆の状態になっている。
- 地方
- 都市部
データを表で見る
| 2009 | 2012 | 2014 | 2017 | 2021 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 地方 | 73% | 60% | 53% | 57% | 56% |
| 都市部 | 66% | 59% | 53% | 54% | 58% |
差が消えた過程を分解する:地方の落ち込みが都市より深かった
差の消滅は「都市部が持ち直した」からではなく、まず「地方の下げ幅が大きかった」ことで起きている。2009年から2012年にかけて、都市部の推定投票率は66.0%→59.4%と6.7ポイント下がったのに対し、地方は72.9%→60.0%と12.9ポイントの急落——2009年に地方で特に強く働いた「政権交代への期待」が、2012年には同じ場所で最も大きく剥落した、と読める推移だ。
その後の2014年は都市52.6%・地方53.2%と両群そろって50%台前半まで沈み、2017年(台風直撃の投票日でもあった——天気と投票率の記事参照)には地方が+2.5ポイントとやや持ち直す。そして2021年、都市58.4%・地方56.0%で初めて符号が反転した。12年間の帯域で見れば、都市部は53%〜66%、地方は53%〜73%——変動の振れ幅そのものが地方の方が大きい、というのがこのデータの示す構造だ。
「地方は投票率が高い」はもう自明ではない
2009年の大きな差は、政権交代への期待がとりわけ地方で強く投票行動に結びついた結果だと考えられる。その後は都市・地方とも投票率の水準自体が50%台まで大きく下がり、両者の差はほぼ消えた。2021年には都市部(58.4%)が地方(56.0%)をわずかに上回るまでになっている。「地方は投票率が高い」という通説は、少なくともこの12年の実データでは、2009年の特殊要因を除けば当てはまらなくなってきていると言える。
この変化は選挙結果の読み方にも効いてくる。仮に「地方の投票率だけが高い」時代が続いていれば、地方に議席基盤を持つ政党は投票率の面でも構造的に有利だったことになるが、その前提は2021年時点で既に崩れている。投票率の都市・地方差を使ったシミュレーション(サイト本体の「都市部投票率上昇スライダー」)が「都市部の投票率が上がったら」という向きで設計されているのは、この実データの推移——都市部の投票率には他地域との差を埋めてなお伸びる余地が観測されてきた——と対応している。
この記事の数値はすべて、総務省公表の候補者別・市区町村別得票や2020年国勢調査などの公的データから、当サイトが独自に集計・計算したものです。チャートも既存の描画ライブラリではなく、このサイト独自のコンポーネントで生成しています。 手法の詳細は各セクションの注記、サイト全体の前提・データの範囲・既知の制約は 計算方法ページ に集約しています。
